Author Topic: VfNrslpmim  (Read 14 times)

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VfNrslpmim
« on: October 15, 2013, 08:33:54 pm »
「それじゃあ、いいですけど……」   男同士のような、女同士のような、見る者を倒錯の世界へ誘うカップルの出現に王都のメインストリートが騒然となる。真美那は内股で歩き、道行く人に微笑みかける。美青年ではすまされない横溢《おういつ》する色気に庶民は圧倒される。
「ははは。どうしてぼくは泣くんだろう。どうして涙が止まらないんだろう……」  「やっぱり。何か秘密があると思ってたのよ……」
「なんかで読んだ気がする」  「これは|千寿※[#「米+羔」、第3水準1-89-86]《せんじゅこう》でございます。隠し味が何か当ててみてください」
 そのような栄光から僅か二年後に、三十九歳のかれがどうして死を選んだのかは、よく判っていない。熱烈な恋愛によって結ばれた最愛の夫人を十年まえに病気で失ってからの寂寥感が、歳月を追うにつれて一層強まっていたのではないか、あるいは当人にしか判らない画業の行詰まりに、ひそかに苦しんでいたのではないか……というのが、親族と友人たちの推測であった。もともと生真面目で、気のやさしい性格だった。ちょうど志功のパトロンである水谷良一とおなじように、愛知県の地方銀行の頭取も勤めた実業家の家に生まれ育ったかれが、美校卒業後に、建築科の同期生の設計で、東京市滝野川区西ヶ原の四百坪の敷地に建てたアトリエは、当時「日本一」と称されたほど立派なものであったのだが、当人は自分の恵まれかたに、一種の後めたさに似たコンプレックスも感じていたらしい。関東大震災のときには、附近の貧しい罹災者にアトリエを開放しているし、その後も貧乏な絵描き仲間に援助するようなことが度度あった。  10
 ああ、そうだ——。恭子の思考は、そこで茂則にではなく花壇に向かった。花壇が造りかけだったのだ。なんとしてもゴールデンウィーク中には完成させたい。そして初夏の太陽がさすころには、我が家の庭で花が咲くのを見たい。一戸建を持ったときからの夢だったのだ。   まだ、という言い方をした自分を疑った。ならばこの男に抱かれる気が少しでもあるというのだろうか。あらためて社長を見る。額や頬が脂でてかっていた。造作に品がなかった。石鹸でどれだけ洗っても不潔感は拭えそうにない顔。先月までの自分なら一億円積まれてもいやだと言っただろう。
 九野は玄関前に横たわった。仰向けになる。   風の声たぼれ西《イリ》の太陽《てだ》拝め

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